施政方針
令和6年度施政方針(令和6年2月27日議会定例会)
田中市長は、令和6年第2回阿賀野市議会定例会において、市政運営に対する基本姿勢や重点施策などを示す施政方針を述べました。
本日、令和6年度の予算案、ならびに関連議案のご審議をお願いするにあたり、市政に取り組む所信の一端を述べさせていただき、議員各位をはじめ市民の皆さまのご理解とご支援を賜りたいと存じます。
はじめに
令和6年度は、「総合計画2016‐2024」で策定した基本構想期間9年間の最終年度になります。
予算編成におきましては、市民生活や市内経済をしっかり支えながら、多くの方から魅力あるまちとして選ばれるよう、まちづくりの目標である「元気で 明るく 活力のある 魅力的なまち」の実現に向けて、子育て政策の一層の充実を図る内容としました。
さらに、阿賀野市総合計画に掲げる3つの重点施策、「人口減少対策」、「デジタル化の推進」、「防災・減災対策」に、「地域経済の活性化」と「脱炭素社会の推進」を加えた、5つの施策に財源を重点的に配分し、その中でも特に、子ども・子育て施策を含む「人口減少対策」を最重要課題として定め、集中的に財源を配分いたしました。
出生数が120万人程度であった1990年代に生まれた人たちは、今がちょうど、結婚や出産をする20代から30代になっています。これらのことを踏まえれば、今後10年間が、少子化対策に取り組む最後のチャンスになると考えられております。
中国のことわざに、「点滴石を穿(うが)つ」という言葉がありますが、小さな取り組みでも積み重ねていけば、いずれ魅力的なまちとなり、「子育てするなら阿賀野市」と多くの方に思っていただけるまちになると信じております。
これらを踏まえ、一般会計の当初予算は、対前年度比14.2%増となる総額253億1千万円といたしました。
それでは、令和6年度当初予算の重点施策について、申し上げます。
5つの重点施策
1 人口減少対策
はじめに、「人口減少対策」についてであります。
人口減少問題は、従来から大きな課題であり、これに歯止めをかけるべく、「子育て環境日本一のまち」をキャッチフレーズに掲げて、子育て環境充実の取り組みを進めてきたところでありますが、今、さらなる取り組みを行わなければ手遅れになるとの危機感から、抜本的な強化を図るものであります。
まず、子育て世帯への支援として、第2子以降の保育料の無償化について、年収500万円以下の所得制限を撤廃いたします。これにより第2子以降の子どもに係る保育料はすべて無償となります。
また、副食費についても国の基準単価を上限に無償化いたします。
次に、子どもの医療費助成について、高校3年生までの入院・通院にかかる医療費について、これまでの通院時の自己負担を撤廃し、全額助成いたします。
次に、令和3年度から実施してまいりました中学生までの子どもに対するインフルエンザ予防接種費用の全額助成を継続します。
放課後児童クラブについては、利用者が増加している京ヶ瀬地区のコスモス児童クラブの施設を拡充することで、定員を増やします。
学校教育への支援といたしましては、まず、子育て世帯の負担軽減を図るため、小中学校に通う子どもたちの給食費の3分の1を補助いたします。
また、児童・生徒が、よりきめ細かな指導を受けることができるよう、学習支援教員を増員いたします。
加えて、スクール・サポート・スタッフを増員し、教員の負担軽減を図ります。
2 デジタル化の推進
続きまして、「デジタル化の推進」についてであります。
行政のデジタル化による業務の効率化や市民の利便性向上を図る取り組みを進めます。
まず、行政事務の効率化として議会にタブレット端末とペーパーレス会議システムを導入し、印刷資料の削減と円滑な会議進行を図ります。
次に、電子入札システムを導入し、事務の効率化と事業者の利便性の向上を図るとともに、競争性・透明性を高めます。
市民の暮らしの利便性向上といたまして、市営バスに、予約状況に応じてAIによる最適な路線を運行できるAIデマンドバスを導入します。
また、GPS機能によって除雪の稼働状況などを確認できるシステムを導入し、効率的、かつ安全な除雪作業を推進いたします。
3 防災・減災対策
続きまして、「防災・減災対策」についてであります。
まず、自然災害等に対する防災・減災対策として、築後40年を経過する京ヶ瀬小学校の改修を実施し、児童の安全確保と建物の長寿命化を図ります。
次に、日常生活における防災・減災として、火災や災害時に効果的に役割を果たせる消防団体制を作るため、消防団組織の再編等を推進いたします。
4 地域経済の活性化
続きまして、「地域経済の活性化」についてであります。

まず、事業者、就農者への支援として、有機農産物の栽培技術の向上に関する取り組みへの支援や、有機米等の学校給食での提供、「道の駅あがの」での販売による販路の確保など、生産から消費まで一貫した体制整備を進めます。
次に、就農に至るまでの1年間の費用助成と手厚い相談体制により、新規就農を目指す人の育成と確保を図ります。
また、地域おこし協力隊を任用し、農業の担い手が不足する集落で新規に就農を進められる環境を整えることで、新規就農につなげます。
次に、交流人口の拡大として、瓢湖水きん公園のあやめ園の環境整備を進め、観光地としての魅力を向上させることで交流人口の増加を図ります。
5 脱炭素社会の推進
続きまして、「脱炭素社会の推進」についてであります。
まず、省エネ・創エネの推進として、公共施設に太陽光発電設備等を導入いたします。
地球温暖化対策実行計画に基づくCO2削減の取り組みとして、笹神体育館に太陽光発電設備と蓄電池等を整備いたします。
また、設備導入により災害時に停電が発生してもエネルギー供給を可能とし、避難所機能の強化も同時に進めるものであります。
加えて、京ヶ瀬屋内運動場の照明をLED化して消費電力を減らすことで、CO2削減につなげます。
次に、環境保全の推進として、森林環境譲与税を利用し、植栽や間伐、林道整備など森林が適正に管理されるよう支援することで、CO2の吸収源となる森林の保全を図ります。
以上、5つの重点施策について申し上げました。
続きまして、総合計画の7つの政策に基づく主な事業内容について申し上げます。
総合計画の7つの政策に音づく主な事業内容
1 安全・安心な暮らしの実現
はじめに、1つ目の政策の柱「安全・安心な暮らしの実現」についてであります。
「防災減災体制の充実、防犯対策の充実、および交通安全対策の推進」では、先ほど申し上げました京ヶ瀬小学校の長寿命化等改修のほか、消防団組織の再編により統合した村杉・大日・今板・出湯地区の消防器具置場を建て替え、再編による効率化と消防体制強化の両立につなげます。
また、災害時に認証不要機能を有する公共施設のWi-Fi機能について、現在の5カ所からさらに3カ所を追加いたします。
加えて、空き家対策事業として、管理不全かつ所有者が不在の空き家について、災害時における倒壊の未然防止や近隣の生活環境の向上を図ります。
継続事業といたしましては、木造住宅耐震診断・改修の費用助成、自治会管理防犯灯の灯具取替等の費用助成、カーブミラー等の交通安全施設の整備事業を継続いたします。
「地域医療体制の充実、健康づくりの推進」では、新たに、がん患者医療用補整具購入費助成事業を開始し、がんの治療を受けている方に補整具(医療用ウィッグ、人工乳房等)の購入費を補助し、外見の変化に悩みを抱える方への負担軽減と社会復帰につなげます。
また、県と市が連携した地域枠・医師養成修学資金貸与制度への負担金を支出し、あがの市民病院での継続的な医師確保を進めることで、将来にわたる地域医療の充実につなげます。
そのほか、引き続き生活習慣病(糖尿病)予防、消化器疾患および運動器疾患(整形外科)の3部門で新潟大学医学部による寄附講座を開設いたします。
また、健診を受診しやすくするため、休日健診の開催および特定年齢者への無料クーポンの配付を継続します。
加えて、市民が運動を習慣化し、健康づくりにつなげるため、誰もが気軽に参加・利用できるものとして、ラジオ体操健康塾の開催や市立図書館および安田交流センターへのフィットネス機器の設置を継続します。
2 子どもの育成支援の充実
続きまして、「子どもの育成支援の充実」についてであります。
第2子以降の保育料の完全無償化、子ども医療費助成、放課後児童クラブの拡充、中学生以下のインフルエンザ予防接種無償化については、先ほど申し上げたとおりであります。
そのほか、新たに、新生児の聴覚検査に係る費用を助成いたします。
また、妊娠初期から出産までの1人当たり10万円の支給、出産から1歳の誕生月までにかかる費用として合計10万円の助成、妊産婦を対象に医療費に係る自己負担分を軽減する「妊産婦医療費助成事業」を継続し、出産、子育てに係る経済的負担を軽減し、安心して子どもを産み育てられる環境をつくります。
さらに、ひとり親家庭等の保護者が、就労するために必要な資格を取得する費用を助成する「ひとり親家庭就労支援事業」、ひとり親家庭で民間賃貸住宅などに入居している方に月1万円を助成する「ひとり親家庭家賃助成事業」を継続し、経済的に苦しい立場にあると言われる、ひとり親家庭の支援に努めてまいります。
次に「学校教育」についてであります。
先ほど申し上げたとおり、新たに、小中学校に通う全ての子どもたちの給食費の3分の1の補助を行うことで、子育て世帯の負担軽減を図ります。
また、京ヶ瀬小学校の長寿命化等改修と併せ、学校給食センターを整備し、安全・安心で快適な学習環境の整備と学校給食の効率的な運営体制を整えます。
さらに、小中学校へのスクール・サポート・スタッフ、学習支援教員の拡充配置を行うほか、中学校の部活動の地域移行に伴い、部活動地域コーディネーターを配置いたします。
3 高齢者や障がい者福祉の充実
続きまして、「高齢者福祉の充実」についてであります。
まず、77歳以降の長寿の祝いを迎える市民に、市内で使えるお菓子クーポン券などの記念品を贈り、健康と長寿をお祝いする敬老事業を実施いたします。
また、低所得の高齢者や障がい者のいる世帯を対象に、屋根の雪下ろし経費について2万円を限度に助成いたします。
このほか、塾のコンビニラジオ体操健康塾、水中運動など健康づくりや介護予防の推進に引き続き取り組むとともに、高齢者地域見守り支援事業や介護予防把握事業などを継続し、住み慣れた地域で、自立し生きがいのある充実した生活を続けることができるよう取り組んでまいります。
次に、「障がい者福祉の充実」についてであります。
重度心身障害者医療費助成事業では、重度の身体障がい児(者)や知的障がい児(者)にかかる医療費自己負担について、これまでの支援に加え、高校を卒業するまでの子どもの入院、通院にかかる医療費を無償化いたします。
また、障害児・者紙おむつ等購入費助成事業では、紙おむつ等の購入費用への補助について、より幅広い支援を行うため、所得要件を緩和いたします。
このほか、障がいのある方が自己選択に基づき、住み慣れた地域で日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付、地域生活支援事業を実施してまいります。
4 地域経済の活性化
続きまして、「地域経済の活性化」についてであります。

「農業の振興」として、オーガニックビレッジ事業では、先ほど申し上げたとおり、有機農産物の栽培技術の向上に関する取組支援や、有機米等の学校給食での提供、道の駅での販売など、生産から消費まで一貫した体制を整備し、有機農産物の産地化を進めてまいります。
また、市内産の堆肥を散布する農業法人、農業者に対し、化学肥料・化学合成農薬の削減割合等に応じ段階的に費用を助成することで、有機農業の産地化と環境保全型農業の拡大につなげます。
さらに、地域おこし協力隊を活用し、担い手が不足する集落で新規に就農を進められる環境を整えることで、地域計画に基づく将来の担い手農業者を確保する取り組みを行います。
農業収入保険加入促進事業については、令和5年度補正予算により既に取り組みを開始しておりますが、収入保険への加入費用を支援し、避けられない自然災害等による農業者の収入減少リスクを低減することで、農業経営の安定を図り、離農者の抑制につなげてまいります。
次に、「商工業の振興」「観光の振興」では、本市の貴重な観光資源である五頭連峰登山道入り口にある登山者カードポスト・情報掲示板について3カ所の修繕と、三ノ峰コース入り口への新設を進め、事故等への迅速な対応と周辺観光のPRにつなげてまいります。
また、若者就労促進支援事業として、就労について悩みを有する15歳から49歳までの若者の就労を促すため、企業でのジョブトレーニングを継続いたします。
このほか、4月から新しく発足する阿賀野市商工会に対しまして補助を行い、引き続き本市の商工業の発展を支援してまいります。
5 生活に密着した住環境整備の促進
続きまして、「生活に密着した住環境整備の促進」についてであります。
「道路環境の充実」では、消雪施設の整備を含め、引き続き修繕を計画的に実施し、雪や災害に強い道路づくりを進めます。
また、先ほども申し上げましたが、新たに、GPS機能を活用し、機械除雪の稼働状況等を確認できるシステムを導入することで、効率的な管理体制と効果的な除雪作業につなげてまいります。
次に、脱炭素社会を推進するため、笹神体育館の大規模改修と併せ、太陽光発電設備と蓄電池等を整備するほか、京ヶ瀬屋内運動場も大規模改修と併せ、天井照明をLED化して省エネ化を進めます。
また、人口減少対策として、市外からの転入を促進するため、空き家対策や住宅施策について、取り組みを強化してまいります。
さらに、管理不全、かつ所有者が不在の空き家について、災害時における倒壊の未然防止や近隣の生活環境の向上を図ってまいります。
そのほか、市外からの転入促進策として、子育て世代や多世代の定住化を促進するため住宅取得費用の一部を助成する「虹の架け橋住宅取得支援事業」や住宅リフォームの費用の一部を助成する「住宅リフォーム補助事業」を引き続き実施いたします。
「市営バス運行事業」では、市営バス江端線、前山線、寺社線、大室線、駒林線について、AIを活用したオンデマンドバスに移行し、効率的、かつ利便性の高い運行に変更いたします。
6 市民協働の推進

続きまして、「市民協働の推進」についてであります。
文化財保護事業では、本年1月、NPO法人京都文化協会様、およびキヤノン株式会社様から寄贈を受けた池田孤邨(いけだこそん)筆「紅葉に流水・山景図屏風(びょうぶ)」の高精細複製画について市施設への常設展示を進め、本市にゆかりのある偉人の業績に市民が間近に触れられる機会を創出いたします。
また、市民の皆さまとともにまちづくりを進めるため、広報誌の一部カラー化を継続し、見やすく、わかりやすい情報提供を行うとともに、自治会活動を支援する「自治会集会施設建設補助事業」や「自治会活動応援事業」を継続いたします。
7 信頼される行政経営
最後に、「信頼される行政経営」についてであります。
先ほど申し上げたとおり、デジタル化の推進を進め、人口減少に対応した行政のスリム化、行政事務の効率化、職員の生産性を高め、併せて、市民の利便性を向上させる取り組みを推進いたします。
前述の議会ペーパーレス会議システム、除雪管理システム、電子入札システムの導入のほか、財務会計システムの更新により、伝票処理と請求書受領の電子化を進めることで、市内事業者の利便性向上と業務効率化を図るとともに、証明書等の取得に必要な窓口手数料の支払いにクレジットカードや電子マネーが利用できるシステムを導入し、市民の利便性を向上させます。

また、「ふるさと納税促進対策事業」では、引き続き、本市の魅力を全国の方から知っていただくため、PR活動やポータルサイトを最大限活用し、かつ体制の強化を図り、寄附金の増額を目指します。
結びに
結びに、私は、市広報紙の表紙に、毎回、「対話と共感」という言葉を、キャッチフレーズとして掲載させていただいております。これは、私の政治の基本理念であり、市政運営を行うにあたり、一番大切にしているものであります。

私ども行政と市民の皆さまが、意見を交わし、お互いに話を聴き、また、話すことによって、共感が生まれるものと思っております。
そして、そのことにより、将来に希望が持てる「元気で 明るく 活力のある 魅力的なまち」阿賀野市が未来永劫輝き続けるものと信じております。
議員各位におかれましては、これからも円滑な市政運営に、なお一層のお力添えを賜りますよう、あらためてお願い申し上げまして、私の施政方針といたします。
阿賀野市長 田中 清善
更新日:2024年04月01日